かたちとコンテクスト−引用による都市連鎖的ノート

ここでは巷に溢れる名キーワードの、とりわけ都市連鎖的読み方を紹介する。特に事物が成立する上での基本概念「かたちとコンテクスト(キーワード3)」は今回の主人公であり、論理の導き役である。これらの引用を活用した上で、後に都市連鎖を《詠む》にあたっての、さらなる拡張キーワードを提案してみたい。

●キーワード1 狼的(巡回空間)/鳥的(放射空間)
人間の空間認識の対立的原理。フランスの人類学者・故アンドレ・ルロワ・グーランの著『身振りと言葉』から。非常に単純化された概念であるが、都市-非都市の初源を考える際の基本として流用可能。
その一方(狼的)は動的で、徘徊する道筋にそって与えられた体験的空間像。筋肉と嗅覚の知覚に結びつき、とくに地上動物の空間知覚を特徴づける。
もう片方(鳥的)は静的で、未知の領域まで拡張された抽象的空間像。地平線で一つになる空と地表のなかで像を統合する。主として視覚の発達した種に関連する。この視覚の放射は、とくに鳥の場合を特徴づけている。
これらの特徴は全ての高等生物内に共存しているのであるが、特に人間においては、それらは本質的に視覚に結びついている。グーランは以上のような狼的認識と鳥的認識との割合の逆転を、人間の農耕生活の開始に見ている。つまり人間がその生活の糧を土地上に点在するランダムな獲物にではなく、土地そのものに見いだした時点と考えることができる。その時に未知に広がる土地の想像的風景を仲立ちとして、空間概念が延長されたのである。
この時点を、古代の開始ととらえてもよい。エジプト、古代中国の事例をはじめとして古代都市の多くが、広大な空間に幾何的な計画性を当てはめようとしたことの背後には、以上のような純粋・抽象的空間把握が存在する。古代日本における条里制は、大陸から伝えられ、都城を養うための、条里地番法を組み合わせた糧としての大地-耕地-であった。と同時に条理を線引きすることによってこそ、国という概念が確立されたのだといえる。もしかりに人間が、白紙の大地に意味あるかたちを作らねばならない恐怖に遭遇した時、幾何学こそは救済である。このようにして古代と巨大幾何学は結びついている。一方で、中世における点的な、あるいは自然発生的な村落の発生は、市場などの具体的コンテクストの蓄積による、その後の狼的空間の復活とも考えられよう。(参考 妹尾達彦『長安の都市計画』)

(中谷)


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