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■白杉家の古い民家のこと −築道のすすめ−(4/6)/中谷 礼仁■

●大きく間違えない

ここで重要だと思うことは、すまいをミリ単位の施工が必要な高度な器としてとらえないこと、そして専門家がもし必要だとすれば、構法や材料、プランニングひいては近隣との関係などまで含めてそのすまいの計画が〈大きく間違っていない〉ことを確認し、是正する役目を担うことである。

具体的に紹介すると、白杉さんのケース以前に行った築道による物件が一件あった。その時は新築一戸建てを町中に建てるというものであった。当方自らが細かく設計したい気持ちもあったものの、築道ができるかの検討への興味の方が優先してしまったのだった。結果として、家はできた。

設計段階では、建て主自ら役所調整や法規など調べるようにさせ(用途地域や斜線制限等の常識に関わるものだからそれほど難しくはない)、平行定規と鉛筆、消しゴム程度の簡易な製図用具をそろわせて、大雑把に平面図、立面図、断面図を描かせる。

その成果に、当方が一回5千円で書道塾のお師匠さんのように赤チェックをし、その際になぜこういうことをやってはいけないかを教える。また図面の描き方もその都度問題点など指摘していると、確かにだんだんと図面らしくなってくる。

その人は都合5回ぐらい通ったろうか、とにかく自分で設計したいこだわりを持っていた人だったので、だいぶそれっぽくなってきた段階で、当方の役割は終了。まあちょっと疲れたのも事実ではあったが、確認申請を請け負ってくれる設計者や大工探しは自ら行うようにさせた。日本には注文住宅という優れたシステムがあるのだからと工務店をけしかけ、その図面を渡して彼らがそれを受け入れたなら工務店をまずは信頼するようということで指導を終えた。多少良心的と思われる工務店探しも協力した。一応施工段階での指導はむずかしくなるから一回三万円ぐらいの謝礼が妥当かなどと思っていたのだが、結局は建て主は自力で工務店と渡りをつけてなんとか実現にこぎ着けたのである。

ただ実は施工段階では問題があった。その建て主はがんばりすぎたらしい。自分の夢を実現する時だからやむをえない側面があるとは思うものの、施工途中で自ら親分よろしく強圧的に工務店の職人にふるまったらしい。これはどう考えても家は自分だけでできるものではないという築道の精神には反していた。という訳で当方も反省したときに現れたのが、白杉さん夫婦だった。

 

 

 

 

 



[写真1]
母屋と厩の間


[写真2]
エキスパートと若い大工の打ち合わせ


[写真3]
白杉家の外観


[写真4]
白杉家の室内